それでは前回に引き続き、生きる意味についての
よくある間違いパート2について
今回はお話しします。
名づけて
生きる意味は成長するため!?
です。
▼人生論を読んで行くと、
生きる意味や目的が書かれているものは
ほとんどありませんが、
ごくたまに、
「生きる意味は成長するため」
というものに出会います。
これは、内面的な成長、人格形成といったものです。
たとえば人生は学校のようなもので、
苦しみや悩みはそこから何かを学ぶための試練としてあるのだ、
だから苦しみ悩みにも意味がある
というのもあります。
これは、そうやって努力して
向上しようということですから、
とても立派なことです。
▼ところが、少し考えると
何だかおかしいことに気づきます。
完璧な人格者になることはできませんから、
どこまでも成長することになります。
それどころか、せっかく成長しても、
最後は死んでしまいますので、
「健康のために生きている」のと同じで、
その目的は達成できません。
最後は完全に崩れ去ってしまいます。
▼そこで、この問題を解決するためか、
スピリチュアルなどでよくあるのは、
死んでも何か魂のようなものが続くとして、
生きるのは「魂を磨くため」「魂の成長」
という考え方です。
例えば、飯田史彦氏の『生きがいの創造』
などではこうあります。

「人生という問題集」の中で、
人間として最も大切なことは「成長すること」です。
(『生きがいの創造』)

ここで言われているのは、魂の成長なのですが、
では、魂が成長するのは、どこへ向かってなのでしょうか。
その理論的な部分を見てみると、
まずは魂が成長してゆくと、
学校でいえば卒業試験にあたる、
もっとも苦しい目にあうそうです。
それに合格すると、地球以外の研修所へ移っていく…、
とこのようにあります。

もう物質世界で人間として学ぶことはなくなる直前の、
最終段階にある意識体(いわば卒業生)は、
まるで卒業試験や卒業論文のような、
もっとも過酷な試練を自分に与えながら生きることに挑戦します。
そして、見事にその人生を生き抜くことができれば、
「人間」を卒業して、地球という研修所を去っていくのです。
地球を卒業したあとには、また、宇宙の各地に数多く存在する、
ほかの研修所へと移っていくようです。
(飯田史彦『人生の価値』)

その宇宙の各地で研修を受けていくのは
何のためなのかというと、
宇宙自体が自らを成長させるためだそうです。
では結局のところ、なぜ宇宙は成長したいのでしょうか?

なぜ、宇宙が「成長したい」と願うのかといえば、
そこに理由などありません。(『生きがいの創造』)

やはり、魂の成長といっても
成長して苦しい目にあうのは何のためなのか、
結局その理由は分からないようです。
▼同じように、多くの人が、
とにかく「頑張るのがいいこと」と思います。
「一生懸命生きる」とか、
「ひたむきに生きる」
「前向きに生きる」
「プラス思考で生きる」
など、それは色々な表現で現れてきます。
確かに、何か目的に向かって
一生懸命ひたむきに走っている人の方が、
のろのろ走っている人より魅力的です。
では、そのひたむきに走っている人は、
何の為に走っているでしょうか?
野球やサッカーなら、確かに素敵でしょう。
しかし、あなたの鞄をひったくって、
捕まらないように前向きに
一生懸命ダッシュしているとしたら、
素敵でしょうか?
最悪です。
できる限りのろのろ走って欲しくなります。
一生懸命ひたむきに走っている姿だけ見たら、
ステキだと思いますが、一体どこへ向かって、
どういう意味があって走っているのかが
大事だということです。
▼同じように、弁護士としての成長と聞くと、
かっこいい感じがしますが、
悪の軍団のお抱え弁護士として(笑)
成長されても、一般庶民には困ります。
科学者としての向上も、
普通は頑張って欲しいところですが、
目標が、安くて効果的な凶悪兵器の開発では、困ります。
人に迷惑な、変な物は作らないで欲しいのです。
ですから、ただプラス思考で、
頑張ればいいのではありません。
「頑張って何をするのか」という目的が、
一番の問題なのです。
▼中には、ただ頑張るのは、
何も考えていないだけと言う人もあります。

日本人は、頑張るのが大好きだ。
人には何かにつけて「頑張ってください」と言い、
自分でもすぐに「頑張ります」と言う。
「勤勉は美徳、努力は必ず報われる」
という慣れ親しんだ言葉を、
どこか心のよりどころにしてしまいがちである。
  だが、何をどう頑張ることが必要なのか。
それをきちんと理解し、実行しているか。
大切なのはそこである。そもそも、頑張るのは、
一見しんどいように見えて、
実はそれほど苦しいことではありません。
何も考えなくてすむからです。
今や、人と同じことを人より長い時間やることを
「努力」とは言わない。
(安田佳生『千円札は拾うな』)

 このように、ただやみくもに頑張ったり、
成長したりするのがいいことではありません。
何を頑張るのか。目的こそが一番大切なのです。
「頑張る」「成長する」と言っても、
そうやって強く、ひたむきに走っていく
目的地はどこなのでしょうか?