これまで3回は、
生きる意味に答えているようで答えになっていない
シリーズでしたが、これからは一応答えているものを
見てみましょう。
今回は、よくある間違いパート4「生きるのは愛のため」です。
ある時、私の知り合いが、
幼稚園の子供さん(女の子)が、
「お父さんは地球の半分ぐらい好きで、
お母さんは太陽ぐらい好き。
でもゆうと君(仮名)は宇宙ぐらい好きなの」
と言っていたと教えてくれました。
幼稚園児にもかかわらず、
高度な宇宙観とすばらしい表現力ですね(笑)
やはり「愛のために生きる」のは、
子供から大人まで一番人気がありそうです。
では、果たしてそれが生きる意味なのでしょうか?
▼誰しも人生で一度は大恋愛を夢見ます。
これはかなり生きる意味の答えになる
可能性が高いのではないでしょうか。
▼自分だけではあまり意味が感じられない場合でも、
好きな相手から愛されれば、
自分の存在に大きな意味を感じることができます。
そんな心情をゲーテは、このように描いています。
ロッテは私を愛している!私を愛している!
──あの人が私を愛してから、自分が自分にとって
どれほど価値あるものとなったことだろう。
(ゲーテ『若きウェルテルの悩み』)
あの人に愛されたい!
そのためならあの人への献身的な努力も惜しみません。
そうして自分のすべてを捧げて
愛する人と一心同体になれれば、
夢のような陶酔感にひたれます。
その幸福感は『「結婚」は人生の唯一にして最大の幸福』と、
誤解を恐れずに言う哲学者もあるほどです(笑)
ところがそんな幸せも、長くは続きません。
アーサー・ヒラー監督の1970年の名作『ある愛の詩』は、
不滅のロマンス映画として歴史にその名をとどめています。
大富豪の一人息子で、
勉強もスポーツも万能のオリバーは、
ハーバード大学時代、
図書館で知り合った貧しいお菓子屋さんの娘、
ジェニーと恋に落ちます。
あまりの身分の違いに、
卒業したら音楽を学びにパリへ行くというジェニーを、
オリバーは引き留め、父親の反対を押し切って、
卒業と同時に結婚。
仕送りを打ち切られたオリバーは、
家を出て安アパートに住み、
ハーバード法科大学院に進学します。
音楽の夢をあきらめたジェニーは、
小学校の先生をしながらオリバーの学費を稼ぎ、
苦労だらけの毎日で、時にはけんかもしますが、
「愛とは決して後悔しないこと」
と夫にほほえみかけます。
2年間の苦学の末、ついにオリバーは、
3位の優秀な成績で卒業、
法律事務所に高給で迎えられます。
同時に二人の間には子供もでき、
すべてが順調に進んでいるかのように見えました。
ところが、産婦人科に行ったジェニーは、
白血病で来年の春を迎えることはできないと
死の宣告を受けます。
オリバーは次々やってくるいい仕事を断って、
必死に看病しますが、
ジェニーはどんどん弱って行きます。
やがてある冬の寒い日、ジェニーが病気だと
はじめて知ったオリバーの父親がかけつけた時には、
ジェニーは死んだ後でした。
「なぜ言わなかった!私が力になったのに」
父親の言葉を、うつろな目をしたオリバーがさえぎり、
「…愛とは決して後悔しないこと」
とつぶやくと、一人、ジェニーとの思い出の場所にゆき、
永遠にたたずみます。
家を捨て、家族を捨て、莫大な財産をも捨てて、
ただ愛のために大変な苦労をしてきたのに、
思いがけず、妻も子供も失ってしまいました。
今までの苦労は何だったのでしょうか……。
▼「結婚」が人生最大の幸福であればあるほど、
それが崩れたときの苦しみや悲しみにうちひしがれるのです。
そんな幸せが崩れてしまった人に、
「続かないからこそ美しいんだよ」
と言ってみても、まったく慰めになりません。
世界的な文豪・シェイクスピアはその厳しい現実を
実に美しく言い表しています。
やっと想いをとげたとなると、戦争とか、死とか、病気とか、
きっとそんな邪魔がはいる
──そうして、恋はたちまち消えてしまうのだ、
音のようにはかなく、影のようにすばやく
……そうなのだ、夢より短く……
あの闇夜の稲妻よろしく、
一瞬、かっと天地の全貌を描き出したかと思うと、
「見よ!」と言う間もあらばこそ、
ふたたび暗黒のあぎと(あご)に呑みこまれてしまう、それと同じだ、
すばらしいものは、すべてつかのまの命、たちまち滅び去る。
(シェイクスピア)
▼このことを、仏教では、
『会者定離』
と教えられています。
出会った者は、必ず別れなければならないということです。
好きであればあるほど、ずっと一緒にいたいのですが、
必ず別れの日がやってきます。
別れの日は、事前に分かるときもありますし、
突然やってくるときもあります。
そのとき、愛する気持ちが強ければ強いほど、
別れの時の悲しみは大きくなります。
では、一体、本当の生きる意味は何なのでしょうか?